「2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きる」ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授、アンドリュー・スコット教授が昨年11月に出版した「ライフ シフト」という本の中に書かれている言葉です。

「そんなに人生、長いんだ」という声が聞こえてきそうですが、小学生の皆さんだけでなく本校の生徒も、そして日本中の多くの児童・生徒も、2100年を迎えることができそうなのです。「10年あれば結構大きいことを成し遂げることができる」とよく言われますが、22世紀を迎える人は、一生のうちにいくつもの挑戦をして、いくつもの成果をあげることができるかもしれません。

小学生の皆さんは中学入試という目標を見据えています。中学生・高校生の皆さんは大学入試という目標を見据えています。しかし、自分の一生を考えると、その目標だけで「今」を生きていいのかな、という疑問が湧いてくると思います。

その疑問に向き合ってみませんか。「目標の時間軸」をもっと未来に伸ばしてみませんか。大学卒業時の22歳でもいいでしょう。キャリアデザイン授業で目指している30歳でもいいでしょう。或いは、不惑の年齢でもある40歳でもいいでしょう。自分の心の中の時間軸を長くすればするほど、今やっていることの付加価値が増えていきます。100年ライフを短く感じるかもしれません。

6年生の皆さん、中学入試が近づいてきました。勉強が思うように進まず、焦っている人もいるかもしれません。「これでいいのかな?」と自信を持てない人もいるかもしれません。苦手教科を心配している人もいるかもしれません。入試のことが頭から離れない人もいるかもしれません。まるで、ずっと先の小さな出口しか見えないトンネルの中にいるように感じている人もいるかもしれません。

「トンネリング効果」という言葉があります。「まるでトンネルの中にいるみたいに視野が狭くなり、先の出口しか見えなくなる集中した状態」を表す言葉です。皆さんは、いろいろな心配を抱えつつ、一歩一歩着実にトンネルの中を歩んでいけばいいのです。「心配してもいい、でも迷うな」と自分に言い聞かせてください。トンネルという環境は見方を変えれば、他のことに影響されずに一つのことに専念できる環境です。「入試に集中できる環境である」とも言えます。

もし不安な気持ちが湧いてきたら、後ろを振り返ってみましょう。トンネルの入り口は出口よりずっと小さく見えるはずです。出口までの距離より遥かに長い道のりを歩んできたことに気づくはずです。支えてくれる人に感謝して、今まで頑張ってきた自分を褒めて、まっすぐ前を見て堂々と、自分の足跡を確実にトンネルの中に残してください。心から応援しています。

私は、小学校・中学校時代にピアノを習っていました。正確に言うと、ピアノを「習わされて」いました。主体的にピアノに向き合っていなかったので、練習もせずに週1回のレッスンに通っていました。優しい先生だったので叱られることはありませんでしたが、「少しでも練習してきてくれれば・・・」という先生の悲しそうな顔が、今でも脳裡に焼き付いています。

「練習を1日休むと本人に分かり、2日休むと音楽評論家に分かり、3日休むと聴衆に分かってしまう」これは、プロのピアニストなら誰でも知っている有名な言葉です。皆さんの中にもピアノを習っている人がいるでしょう。プロでなくても「なるほどなぁ」と理解できると思います。勉強も同じことかもしれません。「勉強を1日休むと本人に分かり、2日休むと塾の先生に分かり、3日休むと『模擬試験』に分かってしまう」

練習でも勉強でも継続が重要です。しかし、他の人に分かってしまうから毎日練習したり、勉強したりするわけではありません。大切なのは、勉強を1日休んだ自分を「どう考えるか」です。勉強をしなかった自分を反省し「しょうがないからやろうかな・・・」と考えるより、「伸びたいと思っている自分に嘘をつくことはやめよう、本当の気持ちをごまかすのはやめよう」と決意すべきです。つまり、「自分の気持ちを素直に行動で表す、自分に限界を設けない」と宣言するのです。自分を大切にすることは、努力を継続させる本質的な原動力になります。

10月14日(土)に、中学校第3学年保護者会を行いました。高校入学を半年後に控えた生徒が、義務教育を受けている中学生から自らの意志で学びを追求する高校生へと、意識を変えようとしている時期に行われる保護者会です。

夢見る乙女から主体性のある女性へ変わろうとしている生徒がいます。何とか努力を持続させようとしている生徒がいます。できるのにやらない自分の弱さをどうにかしたいと思っている生徒がいます。すべきことから逃げずに立ち向かおうとしている生徒がいます。もちろん、夢を実現するために、強い気持ちを持って行動し、それを続けている自律した生徒もいます。

どんな生徒でも自己変革を希求しています。その意志をしっかりと受けとめ、寄り添い、支え、背中を押してあげることが大人の役割です。すべての保護者の皆さまが我が子に「幸せになってほしい」と願っています。その切なる願いは私たちの心にひしひしと伝わってきます。しかし、気持ちは言葉にしないと伝わらない時があります。ましてや、生徒が悩んでいる場合には、言葉だけでなく行動に表さないと伝わりません。

私たちは生徒を言葉で褒めます、言葉と行動で励まします、そして、言葉と行動と気持ちで育みます。私たちの教育活動の根底には、保護者の皆さまの我が子への「生まれてきてありがとう」という感謝の言葉があるのです。

10月21日(土)、22日(日)に清澄祭(文化祭)が開催されます。今年のテーマは、

「宝箱 ~The GIRLS are The KEYS~」です。

高校2年生の生徒実行委員長と副委員長が考えました。「宝箱の鍵は女の子である」「重要なのは女の子である」という二つの意味で “KEYS” を使ったそうです。自分たちの宝箱を自分たちの鍵で開けたり閉めたりする。そんな営みが個人の中で完結されるのではなく、クラスや部活というコミュニティーの中で、友だち、先輩、後輩、先生など多くの人と協力して行われます。それが清澄祭という一つの文化の祭典を創り出します。

しかし、豊富な知識や技能だけを基にした直線的思考では、宝物を産み出すことは困難です。寄り道をしたり、回り道をしたり、立ち止まってみたり、何か別のものとリンクさせてみたり、自分や他者の意見を考え直してみたり・・・。限られた準備期間の中でこんなプロセスを大切にしながら、生徒は思考を豊かにし、協働して、宝物を創り出していきます。このような思考を「グルグル思考」と言っている方もいます。先入観を持たず、無駄に思えることにも考えを巡らせ、柔軟に目標に向き合っていく思考です。

「グルグルGIRLS」の宝物が一杯詰まった清澄祭です。ご来場いただくすべての方々が、ご自分の宝物を見つけてくださることを願っています。

現代はバーチャルリアリティの時代です。実物ではないのに、機能としての本質は同じであるような環境を理工学的に作り出してしまいます。何でも画面上で事足りる世の中かもしれません。秋桜を見たいと思ったらネットで検索すれば、各地のさまざまな品種をいくらでも見ることができます。

こんな時代に実物を見たいと思う人がどれくらいいるのでしょうか。でも、「秋桜が見たい。よし、花屋さんに買いに行こう」と思う人がきっといます。「秋桜が見たい。よし、今度の休みに武田川コスモスロードに行ってみよう」と思う人もきっといます。時間をかけて行動しようとする人たちです。

本物を見て、秋桜の可憐さの中に力強さを感じる人、その色彩に魅せられる人、群生の中の一輪一輪に自立を感じる人が必ずいます。「面倒くさい、手っ取り早く」と思わずに、リアリティを追求する心を大切にする人が必ずいます。中には、秋桜の種を手に入れて、自宅のプランターや庭に植えて、きちんと水をあげて芽が出るのを待ち、その生長を楽しみ、根気強く育てて、花が咲くのを待つ人もいます。

「これが王道だ、仮想現実はダメだ」などと言い張るつもりはありません。ただ、「種から花を咲かせよう」と考え、実際に行動できる中学生・高校生が、この先、力を合わせて創り上げる社会でどんなハーモニーを奏でるか、聴いてみたいと思っています。

先週、学校説明会を行いました。生徒が自分の進む路を考える「キャリアデザイン授業」、学力が伸びる「授業と授業外サポート」、グローバル意識を育てる「国際理解教育」、入試の「募集要項」など、小学生・保護者の皆さんの立場に立って、丁寧な説明を心がけました。

冒頭、私から小学生の皆さんにメッセージをお届けしました。「主体性は素直さに繋がり、それはスポンジのような吸収力を生み出す」「中村は108年目の女子校であり、生徒の伸びたいという気持ちを大切にして、人を育てる学校である」「人の話を聴く姿勢を身につけることが大切である」ということをお話ししました。

灰の中に入れた炭の熱で香木を温め、出た香りを楽しむ「香道」では、香りをかぐことを「香りを聞く」と言います。精神が清らかになり、心の状態が分かるからだと言われています。明治時代以降は茶道や華道とともに、女学校でも教えられていたこともあったそうです。

自然の中で偶発的にできた香木は、いったん焚いてしまうと、二度と同じ香りをかぐことはできません。ですから、「香りを聞く」必要があるのです。人の話も同じです。発せられた言葉だけを耳で聞いていたら、話し手のその時の思いを受けとめることは二度とできません。大切なのは、「言葉を聞く」ことではなく、その言葉の奥底にある「心を聴く」ことです。一人の人間として人と協働するための基本です。

中学校3年生を対象に、「中村高等学校進学説明会」を行いました。毎年、9月、12月、3月の3回に亘り行われる説明会で、今回は、「自分を高める、他者を尊重する高校生に!」というテーマで、私がキャリアコンサルタントとしてお話ししました。

「3年生には欲張って吸収する素直さがある」「夢見る乙女は卒業して、強い気持ちと地道な行動力を備えた希望を抱こう」「感謝すると相手も自分も嬉しい気持ちになり、心が整う」「人との比較ではなく、自分の過去・現在・未来を比較して自分を高めよう」「人の話を耳で聞くのではなく心で聴こう」「今、ここでできることから始めよう」

生徒たちは真剣に話を聴いて、今の自分にとって大切なことを受けとめてくれたようです。生徒の振り返り用紙には、「夢という妄想から卒業し、希望という現実性を抱いて取り組んでいきたいです」「これからは自分の意志でやる、やらされるのではなく自らやる」など、未来志向の言葉が書いてありました。

生徒一人ひとりが、自分という樹の「根」を意識するきっかけになったようです。その根は『星の王子さま』に出てくる「バオバブの根」ではありません。星を突き通して破裂させるような根ではありません。人の心を100%理解しようとし、他者を尊重する根です。将来、地球上に、凜とした幹と多くの葉と個性的な花を生み出す根です。

夏休み前、高校2年生が訪ねて来ました。授業を担当しているわけではないので、用件を予測できませんでした。その生徒は、「ある大学の全国高校生英語弁論大会に応募したいのです。テーマは、“Thinking Globally, Acting Locally”です。どんなことを書いたらいいのか迷っています。」と話し始めました。

生徒が自らの意志で、アカデミックな課題に取り組もうとしている時に、「こういうことを書いたらいいんじゃない」と示すことは、愚の骨頂です。生徒の成長の機会を奪うことになるからです。独創性を封じ込めてしまう可能性があるからです。試行錯誤という伸長のプロセスを埋没させることになるからです。

生徒と私はまず、「グローバル」について話し合いました。ホワイトボードを使って、その本質に迫っていこうとしました。たまたま居合わせた下級生たちは、先輩と校長との一対一の熟議に興味津々でした。「実は過去、蕾は現在、花は未来」と記した人がいます。私はこの生徒の「蕾(つぼみ)」を膨らませることに集中しました。花を咲かせてしまわないように細心の注意を払いました。花は自分で咲かせるものです。蕾を大きくすることが私たち教師の役割です。夏休みという長い時を経て、この生徒がどのくらい蕾を大きくし、どんな花を咲かせたのか。こんなことを考えながら、夏休み最後の日を過ごしています。

桜は春に花を散らせた後、葉を茂らせます。私たちは普通、翌春まで桜の花のことを考えません。早春になって枝につぼみを見つけてはじめて、開花を意識します。

桜は花を散らせた後、夏から秋にかけて気温の高いうちに花芽(生長すると花となる芽)をつくるそうです。花芽は冬が始まると一度生長を止め、寒さが厳しくなると目を覚まして再度生長を始め、気温が上がるにつれて一気に生長して、つぼみをふくらませ開花します。約1週間という短い期間に花を咲かせるために、夏、秋、冬という長い時間をかけて、開花の準備を黙々としているのです。梅雨の水滴を受けとめ、夏の暑さに耐え、秋の気温の低下を体感し、冬の厳しい寒さを乗り越え、つぼみをつくり、可愛い花を私たちに提供してくれるのです。

高校3年生は翌春の「さくら咲く」を目指しています。今春の先輩たちの桜の花を、しっかりと心に留め、今、梅雨を過ごしています。夏に「休眠」するわけにはいきません。ましてや、冬に休眠するなどもってのほかです。夏の暑さに負けず、秋のもの悲しさに焦らず、冬の寒さをものともせず、春まで邁進していきます。高校3年生に「休眠打破」は存在しません。心には、常に灯をともし続ける「聖火」があるのですから。一人ひとりが、それぞれの大切な花を咲かせることを信じ、心から応援しています。明後日からの学習合宿(6泊7日)、一緒に全力を尽くしましょう。